「新車の納車がどんどん遅れて、「これってキャンセルできるのかな?」と不安になっていませんか?
近年では、半導体不足や生産遅延、物流の混乱などが原因で、新車の納期が大幅に遅れるケースが急増しています。
「納期未定」と言われて数ヶ月以上待たされることもあり、購入を見直す方も少なくありません。
この記事では、新車の納車が遅れているときにキャンセルできるかどうか、契約のタイミング別に詳しく解説します。
また、実際にかかるキャンセル料の相場や、高額請求された場合の対処法も紹介。
販売店とのトラブルを防ぎ、損をしないためのポイントを車屋さんが丁寧に解説します。
「キャンセルできるのか?」「いつまでなら間に合う?」「費用はいくらかかる?」
そんな疑問をこの記事でまるごと解決しましょう。
契約書にサイン・印鑑を押した後でもキャンセルできる?
納車が遅いからキャンセルしたい。
注文書(契約書)に印鑑を押したけどキャンセルはできる?
キャンセルできる場合
注文書に押印後でも「キャンセル」することはできます。
「注文書(契約書)にハンコも押したらキャンセルは無理」と考える人がほとんどですが、時間がたっていてもキャンセルはできます。
一般的に、車の契約では「ハンコを押した時点では、契約が成立しない」とみなされています。
自動車公正競争規約に則って監修されている「注文書標準款」において、現金購入の場合、契約成立とみなすのは、
のうちいずれか早い日時とされています。
ほとんどのディーラーでこの「注文書標準約款」が使われていますから、押印後でもキャンセルができるのです。
しかし、中にはキャンセルできない場合もあります。
キャンセルできない場合
割賦販売、ローン提携販売または立替払付販売の場合は、契約書に定められている日に契約が成立します。
販売店の中にはこの約款ではなく「署名・捺印によって契約成立」といった約款(契約書)を使用している店もあります。
この場合、すでに「契約済み」となってしまいキャンセルできません。
契約書を見て、判断に迷う場合は販売店に問い合わせてみましょう。
メーカー発注後でもキャンセルできる?納期未定時の注意点
「納期が未定」と言われ、数ヶ月待っても納車の目処が立たない…そんな状況に不安を感じ、キャンセルを考える方が増えています。
例えば、トヨタのプリウスを注文したのになかなか納車されず、「メーカーに発注済みだからキャンセルできません」と販売店に言われた、という声もあります。
本当に納期未定の場合でもキャンセルできないのでしょうか?
キャンセルできる場合
契約成立前であれば「メーカー発注済み」かどうかにかかわらず、キャンセルは可能です。
ただし、登録後や架装後は「契約成立」とみなされキャンセルできなくなります。
▶登録とは、「車検」をとり、自動車の「所有権」を購入者に移しナンバーをつける事です。
登録前に、できるだけ早くキャンセルを申し出ましょう。
では、キャンセルできない架装とはどのような事例なのでしょうか。
キャンセルできない場合

購入する車に架装を指定したものは受注生産となる為、メーカーに発注後のキャンセルはできません。
すでに、工場でカスタマイズされた車を作り始めてしまっているからです。
特種な架装でなくても、契約時に依頼したカーナビやドライブレコーダー、ETCをつけてしまった。スポイラーやアルミなどの架装をしてしまったなどでも同じです。
この場合、契約が成立したとみなされ、一方的にキャンセルをすることはできません。
キャンセルには販売店の合意が必要となります(合意解除)。
クーリングオフは使える?
「申込みの撤回」や「契約解除」ができるクーリングオフ制度があると聞きましたが、車のキャンセルにクーリングオフ制度は使えますか?
車の購入には、クーリングオフ制度は適用されません。
クーリングオフ制度は、突然で、じっくり説明を聞かずに契約してしまった、断れなかったなどの訪問販売に適用される制度です。
慎重に検討し、自ら販売店を訪れて購入する「新車購入」についてはクーリングオフは使えないのです。
新車のキャンセル方法|契約前後で異なる手続き
契約成立前のキャンセル
契約成立前のキャンセルは、キャンセルを決めたらすぐに販売店に電話を入れましょう。口頭で不安な場合は店を訪れしっかりキャンセルを申し出ましょう。
迷っている間に登録や架装が終わり、「契約が成立してしまう」可能性があります。契約成立後は、キャンセル料金が発生してしまうのでなるべく早く行動に移すことが大切です。
早ければ早いほど簡単にキャンセルができます。
契約成立後のキャンセル
契約成立後とは、登録や架装、または引き渡しが済んだ後の事をいいます。
「契約後にキャンセルしたいけれど、どうすればいいかわからない」という人も多いですが、契約が成立した後のキャンセル方法は基本的に“合意解除”になります。
つまり、一方的にキャンセルすることはできず、販売店と話し合い、損害額をもとにキャンセル料を決定して両者が合意する必要があります。
また、契約成立後は「キャンセル料」が発生するので、販売店とキャンセル金額の話し合いをして合意解除を行うことになります。
★人気車種の場合、キャンセル料を請求されない場合があります。
新車キャンセル料の相場とは?費用と交渉の注意点
キャンセル料の決め方
キャンセル料金は、購入する予定の車に対して「合理的な額」であると決められています。合理的な額とは、販売店が実際に被った損害の事を言います。
販売店が提示した額に合意し、キャンセル料を支払うことで正式に契約の解除(キャンセル)が出来ます。
理由によって金額は変わる?
キャンセル料金は、特別な事情があっても無料・少額になる等はありません。経済的事情や、購入予定者が死んだなど、やむを得ない理由でも同様にキャンセル料金が請求されます。
実際の相場とよくあるパターン
キャンセル料は、ディーラー/サブディーラー/協力店など販売店によって様々です。
トラブルを防ぐためにも、契約時には必ず確認しておきましょう。
新車キャンセルのトラブル事例と対処法

新車のキャンセルは、クレームやトラブルに発展しやすいテーマのひとつです。
とくにキャンセル料の金額に納得できない場合、「そんなに払うのはおかしい」と不満を感じる人も少なくありません。
登録済みプリウスに20万円のキャンセル料は妥当?
たとえば、販売店から20万円のキャンセル料を提示された場合、この金額が妥当かどうかは状況によって異なります。以下に具体的なケースを見てみましょう。
登録済みのプリウスの場合で考えてみましょう。
登録済みとは、すでに車検をとっている状態ですから、安く見積もって販売店は以下の諸費用をすでに陸運局に支払っている状態のことを言います。
この金額をみると、

キャンセル料は10万円でも良いのかな?

乗ってないから新車だろ?
と考えがちですが、いったん登録すると新車は中古車となります。
走行していない新古車でも市場価格が「新車の1~2割」下がります。
プリウスの新車の場合300万円以上しますから1割でも30万円も価値が下がってしまいます。
中古車になってしまった車はメーカーに返品することが出来ません。
ディーラーは在庫を抱えることになり、大変な損害を被るわけです。こうなったら店頭販売するかオートオークションに出品するしかありません。
オートオークションに出品すると、陸送代、出品料などの経費かかりますから、キャンセル料20万円ではもとはとれないでしょう。今までの人件費もかかっています。
つまり、20万円のキャンセル料の提示は、「妥当もしくは安い」といえます。
◆別の購入者を紹介した。
◆ちょうど他の買い手が現れ譲った。
などの場合、キャンセル料金は少額になるかもしれませんが、キャンセルによって高額な違約金・賠償金を請求されるのは仕方がないことなのです。
車両価格の20%を請求された場合の対応策
販売店の中には、キャンセル料を「車両代金の20%を申し受ける」と独自の約款を使用している店もあります。例えば300万円の車をキャンセルしたら60万円ものキャンセル料にもなります。
しかし、このような過度の請求に応じる必要はありません。
高額なキャンセル料を請求され納得がいかない場合は、販売店にキャンセル料の明細を要求し、キャンセル料の「内容や根拠」について説明を求め確認し、再度話し合いましょう。
販売店が実際に被った損害額が20%ある場合は支払わなければなりませんが、そうでない場合は損害額のみの支払いを主張しましょう。
消費者契約法では、「当該事業者に生じる平均的な損害の額を超える損害金の支払いを定めた契約条項(約款)は無効」と書かれています。
納期が待てないなら、リース車がおすすめ
新車の納期が大幅に遅れる中、「すぐに車が必要」という理由でリース車に切り替える方も増えています。
最近では、納期の早さを売りにした「車のサブスク」型リースが注目されています。
代表的な選択肢としては以下のようなものがあります:
- 【KINTO】(トヨタ)…保険料・税金込み、納車が早く解約もしやすい
- オリックスカーリース…中古車リースも選択可
- カーコンカーリース…メンテナンス込みプランが充実
中でも【KINTO】は、トヨタが若年層向けに優先生産枠を設けており、納期が早いことで人気があります。
リース料は高く感じますが、自動車保険料込みなのでお得。
さらに、残価設定がないので、リース終了後の高額な精算がなく明朗会計など、他社とは異なるメリットもあり、「すぐに車が必要」な方には向いています。
一方で、リース期間の柔軟性や費用を抑えたい方は、他社リースも比較して検討するのがおすすめです。
まとめ|新車の納車遅れとキャンセル対応のポイント
- 納車が待てない場合は、納期が早いリース車(KINTOなど)への切り替えも検討する価値があります
- 新車の契約後でも、納車前であればキャンセルできるケースがあります(特に登録・架装前)。
- キャンセル料は販売店が実際に被った損害額が基準。納得できない金額なら明細の提示を求めましょう。
- 「納期未定」や大幅な納車遅れも、キャンセルを検討する正当な理由になり得ます。
- 登録済みの車は中古扱いとなり、キャンセルによる損害額が大きくなる点に注意が必要です。
- 高額なキャンセル料を請求された場合でも、一度内容を精査し、消費者契約法を根拠に交渉できます。